今、この記事を書いてる2018年は『ダークナイト』公開10周年にあたる。
もうあれから10年も経ったのか。
ということは、ヒース・レジャーの死から10年か...
ジョーカーを演じたヒース・レジャーは『ダークナイト』公開を待たずして、28歳という若さでこの世を去ってしまいました。ご冥福をお祈りいたします。
以下、ヒース・レジャーの「ジョーカー」について語っていきます。
具体的には、なぜヒース・レジャーが演じた『ダークナイト』のジョーカーが映画における史上最高の悪役かについて見解を述べていきます。
ネタバレありです。
『ダークナイト』をまだ見てない方は
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「ジョーカー」を演じたヒース・レジャーはただのイケメンじゃない
ヒース・レジャーは1999年公開の『恋のからさわぎ』でハリウッド・デビューしたアイドル顔の俳優。
見ての通り、「イケメン枠」のルックスだ。
そんなヒース・レジャーは、外見だけが取り柄じゃないことを証明する。
2005年公開『ブロークバック・マウンテン』では、わずか26歳、史上9番目の若さでアカデミー主演男優賞にノミネートされた。
演技力は絶賛された。
ブレイク待ったなし。
ハリウッドスター入り。
「次回作はなんだ?!」
「早く次の映画を見たい!」
そんな声があがっているなか、『ダークナイト』のジョーカー役が決まった。
そしてそれを知った“バットマン・フリーク達”は怒った。怒りまくった。
ヒース・レジャーは恋愛映画専門。
「アイドル顔」にジョーカーをやらせるな。
あんなヤツに、バットマン・シリーズにおける最も重要な悪役をやる資格なんてない!
その発言、今となっては皆撤回しているんだろうな。
だって、「アイドル顔」がこれになっちゃうのだから。
『ダークナイト』ジョーカーのココがスゴイ!
それでは、『ダークナイト』のジョーカー、すなわちヒース・レジャー版ジョーカーが、なぜ映画史上最高の悪役なのかを具体的に語っていきます。
4つのポイント、
- 他の悪役と全然違う
- 目的が普通じゃない
- ヒーローは絶対に勝てない
- ヒース・レジャーの度を越えた演技
の順番で説明します。
他の悪役と全然違う
あなたが思い描く、ヒーロー映画の悪役はどんなスキルを持っていますか?
- 超人的なパンチ力でヒーローを10メートルぐらい吹っ飛ばす
- ヒーローを片手で持ちあげて投げつける
などなど、リアルからほど遠い能力をイメージされたはず。
なぜなら、驚異的なパワーが悪役(ヴィラン)の最高の武器だから。
悪役は「金」や「権力」や「地位」をもとめて、目的を邪魔してくるヒーローと"力勝負"をする。
そしてヒーローと同等、あるいはヒーロー以上に力が強いからこそ脅威と感じるのだ。
でもジョーカーの“パワー”は全然強くない。
バットマンが本気になれば、ジョーカーなんて瞬殺できるでしょう。実際ボコボコにされてるし。
じゃーなんでジョーカーはそんなに怖いの?
それは、目的が普通じゃないから。
目的が普通じゃない
取調室での、ジョーカーとバットマンのやり取り。(字幕の設定方法はこちら)
バットマン「じゃーなぜ俺を殺さない?」
ジョーカー「お前を殺したくない」「お前がいないと俺は完成しない」
普通のヴィランであれば、自分の目的を邪魔してくるヒーローを倒そうとする。
だが、『ダークナイト』のジョーカーは違う。
ジョーカーはバットマンを殺す気なんてサラサラない。
だからバットマンはジョーカーが何をしたいのか全く掴めていないし、勘違いもしている。
じゃージョーカーの目的は?
「金」が欲しいのか?
いや、「金」が欲しいわけではない。
ギャングに向かって、「お前らは金の亡者だ」と言い放ち札束を燃やしてしまう。
「パワー」が欲しいのか?
いや、それも別に興味はない。
ジョーカーはバットマンとパワー勝負で勝つ気なんてない。
肉体改造もしないし、新しい武器を手に入れるわけではない。
ジョーカーの真の目的は、秩序をぶっ壊すこと。
ジョーカーは自分のことを「混乱の使者」と呼ぶように、世界に混乱をもたらすことが目的。それこそ最高のゲームで、生き様なのだ。
例
ギャングに立ち向かい、市民から尊敬されている地方検事のハービー・デント。
ハービーみたいな“善”と思われている人間でも、“悪”という二つの顔があることを暴きたい。
そしてハービーは文字通り“善”と“悪”の二つの顔を持つトゥー・フェイスとなってしまう。
例
バットマンは正義の味方ではなく、悪党と同レベルの人殺しであることを暴きたい。
いざ究極の選択が与えられると、市民ではなく自分が愛する女性を優先して助けるような、正義ではなく自分の欲望に忠実な人間であることを暴きたい。
そしてバットマンは市民のヒーロー、ハービー・デントを(ある意味)見殺しにして、愛するレイチェルを救おうとする。
人間は窮地に立たされると、本性が出る。
結局、人間は欲望の塊。
利益と損失を天秤にかけ、いざとなったら仲間を裏切る。
自分と自分の愛する人が助かれば、他人はどうなってもいい。
いい子ぶる一般市民やヒーローの本当の姿を暴くことがジョーカーの真の目的なのだ。
バットマンは正義の味方ではなく、悪党と同じく所詮はただの人殺し。
ヒーローは絶対に勝てない
ジョーカーとバットマンは異なる正義を持っている。
バットマンの正義
社会秩序を乱す悪党が悪い。
悪党を捕まえるためだったら、何してもいい。
警察が逮捕できない悪党を殺さずにやっつけ、刑務所に入れる。
人間は更生できるから、殺さない。
正義の味方であるバットマンは、ルールやモラルを自分のなかで勝手に作っている。
バットマンは悪いヤツをやっつけることができても、人を殺すことはできない。平和をもたらすヒーローなのだから。
「ルール」、「モラル」、「秩序」、「選択」はこの映画における重要なキーワード
一方で、悪役のジョーカーは何を考えているのか。
ジョーカーの正義
大きな力に支配され、自分自身で判断することができない今の世の中こそが狂っている。
「誰かにコントロールされるのではなく、自分のやりたいことをやろうよ。」
「人間はもっと意思があるだろ。」
ジョーカーはジョーカーなりの正義があり、世界を変えようとしている。
自分の正義は正しいと考えるから、ジョーカーはバットマンから逃げない。
それどころか、バットマンに殺されることを願っている。
バットマンに殺されることこそ、最高のに死にかただと思ってる。
バットマン vs ジョーカーの一騎討ち。
ジョーカーを殺せる絶好の機会だが、正義感という名の自分のなかで勝手に作ったルールのせいで、バットマンはチキンレースに負けてしまう。
ここでは、ジョーカーはバットマンに殺されることを本当に願っていることがわかる。
持っている銃はバットマンに向けているのではなく、自分とバットマンの間を走っている車に発砲し、バットマンが突っ込んでこれるようにわざわざ道を開けている。
ポイント
人を殺せないバットマン
vs
バットマンに殺されたいジョーカー
人間(ジョーカー)を殺せないバットマンに勝ちはない。
ジョーカーを捕まえて刑務所にぶち込んでも、ネクスト・ジョーカーが現れて世の中は何も変わらない。
バットマンの負けは、戦う前から決まっている。
スーパーヒーローの強みは、驚異的な肉体や最先端のテクノロジー。
今までのヒーローは自分の強みを活かし、ヴィランをやっつけ、ハッピーエンドを迎える。
しかし、『ダークナイト』におけるジョーカーには、スーパーヒーローの強みは完全に無効。
なぜなら、ジョーカーはヒーローに殺されることを願っているのだから。
悪役を殺せない、スーパーヒーロー。
スーパーヒーローに殺されたい、悪役。
バットマンは絶対に勝てない。
ヒース・レジャーの度を越えた演技
『ダークナイト』のジョーカーは史上最高の悪役と言っても過言ではない。
それは、ジョーカーのキャラクター性もあるけど、ヒース・レジャーの演技力が半端じゃないから。
笑い方、目つき、猫背の立ち方、口が乾いたくちゃくちゃ話す姿、もう全部半端ない。
冒頭でも書いたが、ヒース・レジャーは『ダークナイト』の公開を待たずして、28歳という若さでこの世を去ってしまった。
死因は、睡眠薬の過剰摂取とされているが、ジョーカー役に入り込み過ぎたことも原因の一つと言われている。
ヒース・レジャーはジョーカーの役作りを専念できるよう6週間ロンドンのホテルに閉じこもった。
「サイコパスは話し相手がいない」と知り、外部との連絡を途絶え、ひたすら演技の練習にはげんだ。
精神異常者のマインドを理解するために専門書を読みあさった。
「ジョーカーならこうするだろう」と考え、監督クリストファー・ノーランに自ら演出を提案。
例えば、「ジョーカーは自分でメイクをしているはず」と考えたヒースは、実際に自分の手でメイクをしている。
下の写真でもわかるように、手にメイクの跡が残ってる。
ちなみに、ティム・バートン版『バットマン』でジョーカーを演じたジャック・ニコルソンはこちら。同じキャラクターでも、全然違うジョーカーでしょ。
死後、「ジョーカーの笑い方、話し方」を録音したレコーダーや、ホテルに引きこもった時につけた日記が出てきた。
出てきたのは、ヒース・レジャーの日記ではない。
サイコパスになり切ったヒース・レジャーの日記だ。
それほど役作りを徹底し、肉体的にも精神的にも疲れ切ったヒースは不眠症に陥ってしまった。
睡眠薬を摂取しないと寝れない体になり、薬の併用摂取がもたらす薬物中毒による事故死でこの世を去った。
ヒース・レジャーは映画を成功させるために命を懸けていたのです。
ヒース・レジャーが演じたジョーカーは、この世のどこかにいる、本当にいそうな狂ったサイコパスだと思えてくる。それほど人間味があふれている。
ヒーロー映画では唯一無二の本当にいそうな悪役。
明日のニュースで報道されてもおかしくない、リアルな悪役。
映画『ダークナイト』は傑作だ!
アメリカのアメコミ・ファンにとって「バットマン」は特別な存在。
ここ最近の映画では、ワーナーが映像化権を持っているDCコミックス(バットマン、スーパーマンなど)はディズニーのマーベル(アイアンマン、スパイダーマン、キャプテン・アメリカなど)に完全敗北となっている状況だが、未だにバットマンは「アメリカ人が選ぶ好きなヒーローランキング」の人気投票で1位を獲得している。
それは、ティム・バートン版『バットマン』が素晴らしかったということもあるが、『ダークナイト』の伝説的な「ヒース・レジャー版ジョーカー」が今でも脳裏に焼き付いているからではないか。
ぼくは、ヒーロー映画が特段好きというわけではない。
もっと言うと、ダークナイト・トリロジー(3部作)の1作目『バットマン・ビギンズ』と3作目『ダークナイト・ライジング』は全く好きになれなかった。
ただ、『ダークナイト』は傑作だ。
ジョーカーのキャラクター性とヒース・レジャーの演技は「スーパーヒーロー映画」の常識をぶち壊し、映画史に残る作品となった。
と、ここまで大真面目に書いてしまったけど、
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