2019年のトレードデッドラインが過ぎ、トレードを要求したアンソニー・デイビスの交渉は失敗に終わった。
ひとまずデイビスはニューオーリンズ・ペリカンズの一員として残ることになったが、FAとなる2020年夏を待たずして他チームへの移籍は「ほぼ間違いない」とみてもいい。ペリカンズとは契約延長しないと公にしていることから、2019-20年シーズン開幕前には別のユニフォームに袖を通していることでしょう。
ペリカンズは今非常に厄介な状況だ。「もうこの会社嫌なんだけど! 契約切れたら速効で転職しよう!」って言っているヤツをチームに残したくないだろう。また、
- タンキングしたいのにデイビスが試合に出ると勝っちゃう
- デイビスにケガをされたらトレード価値が下がっちゃう
- 若手や来季以降もチームに残るであろう選手を育てたい
といった理由から、もうこれ以上デイビスを試合に出す必要はない。だからNBAトップ5に入るであろう選手を適当な理由で休ませて、オフにトレードして…
でも残念ながらこのシナリオはうまくいかない。デイビスを出場させない場合、1試合ごとに10万ドル(役1100万円)の罰金処分が下されることになった。
そんなルールあったんですね? よくあることだと思うんだけど…
この記事のもくじ
勝敗に影響力がある選手を休ませた場合、リーグより罰金処分が下される
リーグ規定で出場可能なデイビスを起用しない場合、1試合ごとに10万ドル(役1100万円)の罰金処分が下されることが決定した。ペリカンズはトレードデッドラインからシーズン終了まで残り25試合。すべての試合に欠場した場合、250万ドル(約2億7600万円)だ。
この「出場可能(健康状態が良好)な選手を休ませた場合の罰金処分」に関する規定は2017年に追加されたルールからきている。
Teams can't sit healthy players for high-profile, nationally televised games, and fines for violating that can be for at least $100,000.
ざっくり翻訳
チームは知名度の高い、全国放送される試合で健康状態が良好な選手を休ませることはできない。違反した場合は少なくても10万ドル(役1100万円)の罰金処分が下される。
ただし、このルールは「勝敗に影響力がある選手」に限られるとのこと。
逆にいうと「勝敗に影響力がない選手」は該当しない模様。
でもこれ、ルール的に穴だらけじゃないっすか? 線引きむずくない?
具体的には「2つの穴」についてちょっと言わせてください。
なにこの「勝敗に影響力がある選手」ルール? この場合はどうなるの?
「出場可能(健康状態が良好)な選手を休ませた場合の罰金処分」は「勝敗に影響力がある選手」にのみ適用される。
ところで、この2つの場合はどうなっちゃうんですかね?
選手実力の線引き
まずルールの穴その①、選手実力の線引き。
たとえば、2018-19年シーズンの4選手をみてみよう。(ぱっと思いついただけで、他にもいそう)
- メンフィス・グリズリーズのチャンドラー・パーソンズ
- ニューヨーク・ニックスのエネス・カンター
- クリーブランド・キャバリアーズのJ・R・スミス
- ヒューストン・ロケッツのカーメロ・アンソニー
チャンドラー・パーソンズは勝敗に影響あるかと言われたら微妙なラインだけど(失礼)他の3選手はチームに貢献できたはず。エネス・カンターはニックスのNo.1センターだったし、ピークを過ぎたJ・R・スミスやカーメロ・アンソニーもまだまだ活躍できたはずだ。(カーメロはいろいろと別な理由がありそうだけど)
「勝敗に影響力がある選手、ない選手」はどうやって決めるの? 線引きは誰が決めるの?
実力以上に個人スタッツを残している選手はたくさんいるし、何かと理由つけていろいろと誤魔化せそうだし…
出場時間の規定
ルールの穴その②、出場時間の規定。
デイビスを起用しない場合、1試合ごとに10万ドル(役1100万円)の罰金処分が下されることになったペリカンズ。さすがにヤバいと思ったのか、次の試合の対ミネソタ・ティンバーウルブズにデイビスを出場させることにした。
さすがNBA5本の指に入る選手。デイビスは第3クォーターまで25分の出場で32得点9リバウンド。そして第4クォーターは…
第4クォーター出場しなかった。競っていたにも関わず。
ヘッドコーチのアルビン・ジェントリーは1試合25分以上出場させないことを事前に決めているとのこと。
でも「勝敗に影響がある選手」の出場時間の線引きはどうやって決まるの?
たとえばデイビスが10分だけ出場し、残りの38分間をプレーしなかった場合はどうなるの?
これも「いや~デイビスより他の選手の調子が良かったので…」といくらでも言い訳できそうだけど…
かつてのスパーズは「選手を休ませる」ことで大成功をおさめた
2000年代のサンアントニオ・スパーズは定期的に選手を休ませることで黄金期を築けたとも言えるでしょう。BIG3のティム・ダンカン、トニー・パーカー、マヌ・ジノビリは怪我をしていないにも関わらず、全国ネットの試合でも堂々と「故障者リスト」入りさせていた。
もっというと、そもそもティム・ダンカンを97年のドラフトで全体1位指名できたのも、健康だったデビッド・ロビンソンをシーズン後半に休ませたことからきている。
プレーオフ、ファイナルで勝つためにはスパーズがうまくやっていたように「本気出すとき」と「手を抜くとき」の見極めが必要であることは過去でも証明されている。
ポイント
チームは知名度の高い、全国放送される試合で健康状態が良好な選手を休ませることはできない。違反した場合は少なくても10万ドル(役1100万円)の罰金処分が下される。
非常に難しい問題ではあるが、このルールには改善が必要だ。