2018年10月27日、フェニックス・サンズ対メンフィス・グリズリーズ。日本バスケ界に新たな歴史が刻まれた。
田臥勇太選手以来14季ぶり、日本人としては2人目、渡邊雄太選手がNBAのコートに立ったのだ。
大変な快挙です。おめでとうございます。
渡邊雄太選手の活躍には期待したいところ。
だが、10月30日に行われた次戦の対ワシントン・ウィザーズ戦、2way(ツーウェイ)契約の渡邊選手は出場選手に登録されなかった。
- 2way(ツーウェイ)契約とは?
- 本契約と違うの?
- 渡邊雄太選手は今後も出場できそうなの?
そういった疑問に答えます。
この記事のもくじ
NBAの2way(ツーウェイ)契約とは?
2017-18年シーズンから新たに始まった2way(ツーウェイ)契約とは、2通りの契約という意味です。
2way契約の概要
- 基本的にはNBAの下部組織であるGリーグでプレーしつつ、レギュラーシーズン中(プレイオフは出場不可)最大45日までNBAチームに所属することができる。
- 各NBAチームは同時に2人まで契約でき、既存のロスター枠15選手にカウントされない。(事実上各チームの選手数は17人(15人+2人))
- 2way契約選手のサラリー(年俸)はNBAチームのサラリーキャップ(年俸総額の上限規定)に計上されない。
- サラリーはGリーグ契約77,250ドル(約870万円)に加え、NBAチーム所属日数に応じてNBAルーキー最低サラリーの日割り分(最大で385,000ドル(約4,300万円))が支払われる。
- 対象となる選手はリーグ在籍4年目以下の選手で契約期間は最長2年(4年目選手のみ1年)まで。
メリット
- 事実上NBA選手の枠が60人増えた。(30チーム×2人=60人)
- 選手は、給与が保証されながらNBAに挑戦し続けることができる。
- チームは、数年後を見据えて選手を育成できる。また、サラリーキャップへの影響が全くない。
デメリット
- 選手は、2way契約を結んだチームとしかプレーできない。通常のGリーグ契約選手はすべてのNBAチームから招集される可能性があるが、2way選手は契約したチームからしか招集されない。(他チームへのトレードは可能)
- チームは、シーズン中にGリーグから選手を補強したい場合、選手探しが以前より難しくなった。
つまり、①下部組織のGリーグでプレーしつつ、状況によっては(例:NBAチームの契約選手にケガ人が出た、Gリーグでの活躍が認められたなど)②本家NBAから招集がかかり、すぐにNBAのコートに立てるといった2通りの契約制度だ。2way(ツーウェイ)契約を勝ち取った渡邊雄太選手は、基本的にはメンフィス・ハッスル(Gリーグ)に所属し、招集がかかるとメンフィス・グリズリーズ(NBA)に昇格できる。
「でも、何があるかわからないし、グリズリーズの試合がある日はベンチ入りさせとけばいいんじゃないの?」
と思うかもしれないが、なかなかそうは行かない。
2way(ツーウェイ)契約の最も難しいところは、最大で45日間しかNBAチームに所属することができない点。45日間は試合だけではなく、チーム練習や移動などもカウントされてしまう。
NBAのレギュラーシーズンは10月中旬~4月中旬まで、約6か月間も熾烈な闘いが続くきます。45日間という縛りが設けられている2way(ツーウェイ)契約は、選手にとってもチームにとっても、ある意味“シンデレラ状態”とも言えますね。
渡邊雄太選手は再びNBAのコートに立てるのか?
10月27日の対フェニックス・サンズに出場したのにも関わらず、次戦10月30日の対ワシントン・ウィザーズ戦には選手登録されなかった渡邊雄太選手。渡邊選手は再びNBAのコートに立てるのか?
結論から言うと、本人のケガさえなれけば、ほぼ間違いないく2018-19シーズン中は少なくても数試合はNBAに出場できると私は考えます。なぜそう思うか、所属するメンフィス・グリズリーズのチーム状況を踏まえてうえで20年間NBAをみてきた私が説明します。
具体的には、
- グリズリーズのフォワード(渡邊選手のポジション)
- グリズリーズのケガ人
- タンキング
がキーポイントになります。
グリズリーズのフォワード(渡邊選手のポジション)
2019年2月9日更新
2018-19年シーズンのトレードデッドライン終了後のロスターに更新しました。

出典:nba.com
渡邊雄太選手と同ポジションの Forward (フォワード)選手を赤、若干被りそうな Guard-Forward(ガード/フォワード)と Forward-Center(フォワード/センター)選手を青四角で囲みました。(※渡邊選手のポジションはなぜかガードになっていますが、本来のポジションはフォワードと仮定します。また、スモールフォワード、パワーフォワードの分類は省きます。)
- カイル・アンダーソン
- ディロン・ブルックス
- ブルーノ・カボクロ
- ジャスティン・ホリデー
- ジャレン・ジャクソンJr.
- C・J・マイルズ
- チャンドラー・パーソンズ
- アイバン・ラブ
- ジュリアン・ウォッシュバーン
グリズリーズと本契約を結んでるフォワード選手は9人。ある意味、渡邊雄太選手にとってライバルと言える選手は多いですね。
しかし、激しい闘いが強いられるNBAにケガはつきもの。
喜んではいけないことだが、グリズリーズのフォワード選手にケガ人が出ると2way(ツーウェイ)契約の渡邊選手の出場機会がみえてきます。
グリズリーズのケガ人
.@memgrizz injury report, 10/27 vs @Suns:
PROBABLE
Dillon Brooks (right foot soreness)
Marc Gasol (neck soreness)OUT
JaMychal Green (broken jaw)
Chandler Parsons (right knee soreness)— Grizzlies PR (@GrizzliesPR) 2018年10月26日
OUT
JaMychal Green (broken jaw)
Chandler Parsons (right knee soreness)
10月27日、対フェニックス・サンズの前、渡邊雄太選手と同ポジションのジャマイカル・グリーン、チャンドラー・パーソンズがケガのため、ベンチ入りから外れました。そのため、渡邊選手にチャンスが回ってきたのです。
ジャマイカル・グリーンは顎の骨折のため約1か月の離脱、チャンドラー・パーソンズは軽めの右ひざ痛。この二人のうち、復帰が早いのはチャンドラー・パーソンズだろう。
しかし、チャンドラー・パーソンズは両ひざに爆弾をかかえている選手です。2015年以来手術を繰り返し、毎年のように「今季絶望」で早めにシーズンに幕を閉じている。喜ばしいことではないが、2018-19年シーズンもケガでの離脱が多いと予想します。ケガしがちのパーソンズがまた故障すれば、渡邊雄太選手がNBAでプレーできる可能性はグッとあがるでしょう。
タンキング
NBAでは(tank = タンク)もしくは(tanking = タンキング)という言葉が存在する。
タンキングとは?
ウェイバー方式を採用しているNBAドラフトは、前シーズンに成績の悪かったチーム順に、高指名権を獲得しやすい。(あくまでも確率が高くなるだけ。)また、1巡目1位~3位指名権までは前シーズンにプレーオフに進出できなかった14チームによる抽選で指名順位が確定される。そのため、プレーオフ進出の見込みが薄いチームは「わざと試合に負けて成績を落とす = 翌ドラフトの指名順位をあげる」傾向に走る。このわざと試合に負けることをタンキングというのだ。もちろん、わざと負ける行為は許されていない。しかし、「わざと」の見極めが難しい。
ウェイバー方式は良い点もたくさんあるが、残念ながらタンキングのように悪い点も目立つ。そしてこのようなナゾの現象が起きてしまうのです。
プレーオフ進出が絶望的
↓
少しでも成績を落とした方が翌ドラフトに有利になれる
↓
でもわざと負けちゃダメだから「頑張ってないけど頑張っているフリ」をしよう
↓
エースやベテラン選手はケガしてないけど、勝っちゃいけないからまだ未熟の若手選手を出そう
そうです。
2way(ツーウェイ)契約選手などの若手は、タンキングチームにこそチャンスが掴みやすい傾向にあります。今季のメンフィス・グリズリーズは実力面から分析すると“ほぼ”間違いなくプレーオフ進出できない、タンキングチーム。
よって、タンキング時期に入る頃のシーズン終盤、渡邊雄太選手の出場登録が増えると予想します。
最後に
2way(ツーウェイ)契約選手は、基本的には下部組織Gリーグでプレーし、招集がかかると本家NBAに昇格できる。また、2way(ツーウェイ)契約選手は最大で45日間しかNBAのチームに同行できない。(試合だけではなく、練習も含む)
NBAのコートに立ったとはいえ、45日の制限が設けられている渡邊雄太選手の場合、メンフィス・グリズリーズ(NBA)よりも、メンフィス・ハッスル(Gリーグ)で活躍が目立ちそうですね。
ただし、2way(ツーウェイ)契約選手でも実力が認められれば、NBAチームとの本契約という可能性もあります。
直近の例だと、2way(ツーウェイ)選手だったクイン・クックは契約を打ち切り、ゴールデンステイト・ウォリアーズと本契約を結びました。今では、ステフィン・カリーの控えポイントカードとして、十分すぎるぐらい活躍中。
頑張れ、渡邊雄太選手!